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たましふる大峯~神崎士郎 なっしょのないしょ~

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一年の半分を奈良の世界遺産大峯山頂宿坊で暮らす写真家神崎士郎が綴る日々のあれこれ。見たこと見ないこと……。

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きょうは早朝から山は雲の中。
また台風が発生したしゲリラ豪雨もあちこちで猛威を奮っている。それでも土曜日。まだ暗いうちから歩いて来た人たちの鈴の音が時折宿坊の前の参道を通って行く。
ティン シャラン カラン、誰か入って来た。
朝食の手を止めて顔を出すと「おーい、来たぞ」とターオさんの笑顔。
「はっやいねぇ!また稲村ケ岳を廻って来たの?」
「おう、大日山にも参って来たんや。かみさんが大日如来を信心しとるさかいにな」
ターオさんは奥さん思いだ。ひと昔前は吉野から熊野、奥駈道を行ったり来たり。
「この足はのう、神崎さん、「いい足だ、よく歩く足だ」と医者が太鼓判を捺してくれた足なんや」
そうやねえ、大峰山系を随分暴れまわった足だ。
「ところでのう、これと同じのかみさんにも画いてくれんか」
自分の着ているカンマン白衣を指して言う。梵字と修験道の三尊を墨と柿渋を使って画いた。今は山より奥さんといる時間を大切にしているターオさんらしい。
「きょうはやなあ、かみさんが山上(さんじょう)さんへ行って来いと言うてくれたんや」そうな。
ターオさんを見送ってしばらくして突然ザーッと大雨が降って来た。地軸を洗い流すような雨、とはこのこと。こんな雨を山の古老はオオアメサンダワラという。俵のように太い雨のことだって。
雨が上がり、ずぶ濡れでいかにも清々したという様子の人たちが次々と上って来なさる。
豪雨が収まって落ち着いた頃、ひとりの外人さんが今宵の宿を求めてやって来た。洞川登山口から上ってここを素通りして奥の大普賢岳まで行き、帰って来たという。しかもめったに足を踏み入れない地図上では点線の道をたどり、谷底に下りてから山頂を極めたんだと。
オランダ……、イメージでは山など無く風車が並びチューリップ畑が広がる平らな国から、こんな異国の深山幽谷の地へ、よくぞ来られた。
地図の世界を通り抜けて遠路遥々、その思いの来る所を考えると気の遠くなる。
翌朝早く、彼はまた大普賢を越えてさらに南の弥山(みせん)へと向かって行った。
後ろ姿の霧に紛れてひょろりと遠ざかり…。

大峯山上豆知識
「カンマン」
不動明王を表す梵字(インドのサンスクリット文字を由来する、一字一字が仏を意味する)
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# by tamashifull | 2011-08-02 18:04
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ぼくは士郎丸。
八月の声を聞くと大峯山上の宿坊の夜は小寒い。
原生林に囲まれた東の斜面に四軒。
ぼくの部屋は朝陽も夕陽も射し日当たりも1日中いいけど、宿坊の中は土間なのでひんやりしている。
土間は三和土(たたき)と言ってね、全部堅い土で出来ている。
雨や霧の日が長く続くと白カビや青カビまで生える、十年前に比べたら減ったけど。
真夏なのに今夜も豆炭炬燵に足を突っ込んでいる。
おや?鈴の音色が?!近付いて来る、こんな夜更けに。ブオーッ♪法螺貝だ。向かいの宿坊に入って行った。
この山は夜通し歩いてお参りに来る人たちも多い。 ぼくも昔はよく夜の山を登ったな。
ケモノの気配、見えないモノの気配、自分の気配、怖いけどやがて研ぎ澄まされてくる、その内、足下の山道も消えて上下も左右も無くなり全体になる…。
今は夜歩くことはなくなったけど、きょうも耳を澄ませば山の夜の音でからだが満たされてゆく。
明日は土曜日、忙しくなるといいな。

大峯山上豆知識
「納所」なっしょ、と訓む。宿坊の責任者。ホテルで言えば支配人のこと。
執事。帳場(フロント)に座して登拝客と応対する。士郎丸の仕事です。
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# by tamashifull | 2011-07-29 23:58
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台風とともにやってきた4人の山伏。
一行を率いるのは15年前、洞窟に100日間籠る行をしたフランス人。
彼は若い頃忍者になるために日本にやって来た。
そして今は修験道を広げるためにフランスでお寺を開いている。
ひとりは彼が行をしたときにサポートした長身イケメンのフランス人でその時宿坊の仕事も手伝ってくれた。
3人目はニューヨークに住むインド人で書と水墨画を学び流暢な古い日本語を話す。
4人目は『YOJINBO用心棒』という名のボディガードの会社を経営する巨漢のフランス人。
彼らのお経を唱える姿からは国籍を超えた素直な信仰心が伝わってきた。
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# by tamashifull | 2011-07-29 00:03